クリエイティブ・マネジメント(Creative management)
クリエイティブ・マネジメントとは、創造性開発の原則を導入して企業経営を研究対象とする学際的研究である。経営学の研究分野であれば、創造性研究の応用でもある。前者について、すでに一世紀を超える歴史があり、後者についても80年の歴史を越えている。ここでいう創造性開発の原則とは、普遍性の原則、発展の原則と環境の原則を指す。普遍性の原則によれば、潜在と顕在の差があるものの、誰でも創造性を持っているため、潜在的創造性を引き起こして開花させることが大事である。発展の原則によれば、創造性は開発すればするほど顕在化になる可能性が高くなる。環境の原則によれば、創造性開発は環境に左右されやすく、環境は良ければ、創造性が早く顕在になるが、環境は良くなければ創造性が抑圧される。このようなことが分かれば、クリエイティブ・マネジメントを行うには、従業員全員を創造の主体と見なし、潜在の創造性を引き起こすために良い環境を作らなければならない。ただ、これはあくまで一般論である。なぜなら世の中には環境が悪いからこそ創造性が爆発的に伸びるケースもあるからである。
大英図書館で検索したら、世界初でCreative managementというキーワードを書名に入れたのは、1931年にニューヨークのAssociation Pressから上梓された『Creative Management: The relation of aims to administration』である。著者はアメリカの教育者のOrdway Tead(1891-1973)である。その後、1970年代まで、Creative Managementを書名に入れた本は6点しかなかった。しかし、1980年代に入って、クリエイティブ・マネジメントに関する研究は活発になったため、研究成果としての著書も大分増えてきた。
世界範囲で言えば、主な研究機関はハーバードビジネススクール、スタンフォード大学ビジネススクール、テキサス州立大学オースティン校、イギリスのオープン大学および近畿大学経営イノベーション研究所である。
クリエイティブ・マネジメントの研究領域は二つある。一つは創造的企業である。主に業界トップ企業の創造的行動と創造的環境を研究する。前者は個人の創造性、チームの創造性と組織の創造性を含み、後者は物理的環境と社会的環境を含む。もう一つは、創造的経営者である。主に経営者の創造力と創造的個性(パーソナリティ)を研究する。前者は創造的思考力、創造的意思決定力と創造的リーダーシップを含み、後者は自立、衝動、好奇心を含む。
[参考文献]
- Charnes, A. Cooper, W.W. (eds.) (1984) Creative and Innovative Management. Cambridge,
MA: Ballinger Publishing Company. - Henry, J. (1991) Creative Management. London: Sage Publication.
- Henry, J. (2001) Creativity and Perception in Management. London: Sage Publication.
- Ijiri, Y. Kuhn, R. L. (eds.) (1988) New Directions in Creative and Innovative Management.
Cambridge, MA: Ballinger Publishing Company. - Kuhn, R.L. (1985) Frontiers in Creative and Innovative Management. Cambridge, MA: Ballinger Publishing Company.
- Xu, F. McDonnell, G. and Nash, W.R. (2005) A survey of creativity courses at universities in principal countries. Journal of Creative Behavior. Vol.39, No.2, pp.75-88.
- Xu, F. (2013) Creative Management, in Carayannis, E.G. (ed.) Encyclopedia of Creativity, Invention, Innovation, and Entrepreneurship. New York: Springer, pp.317-321.
- 徐方啓 (2005 ) 「創造経営学の確立を目指す提案」日本創造学会論文誌Vol.9, pp.111-123.
(徐方啓)