無分別

無分別

無分別は善・悪の対立を超えた絶対的な知(仏の智慧)を表した仏教用語である。本来善・悪といった価値はないにもかかわらず、人間が自らの価値判断で善悪の区別をしてしまうことに迷いの原因がある。仏教の目的の一つは迷いを取り除くことで、その一つは善悪を無分別で観、善悪感を消滅させることと、坐禅における不立文字、すなわち脳裏に文字を置かない修行とがある。新しい物事を発想する場合も先入観や常識にとらわれていると革新的な気づきが妨げられる。このように俗語にとらわれない姿勢を無分別という。類型では、KJ法でカードの文言に縛られず、概念化することで、他のカードの概念と複合して昇華させ、革新的なアイデアに至ることがある。開発者の川喜田二郎の言葉に「虚心坦懐に己をむなしくして、ラベルの語りかける声を傾聴しよう」というのがある。無分別の心境である。

[参考文献]

  • 「無分別のすすめ」森政弘・PHP文庫
  • 川喜田二郎・牧島信一著:問題解決学 KJ法ワークブック、講談社、1970

(田村新吾)