Big-C、little-c

Big-C、little-c

創造性研究では、従来から注目する創造性の水準の違いで2つの大きな流れがあった。一方は、社会的に大きな影響を与え「創造的」との社会的評価が定着した創造者や創造的産物に関する研究でBig-C(大文字の創造性)の研究の流れである。

他方は、ふつうの人の日常生活での工夫・発明や個人的成長なども一種の創造性とみなし、これを対象にするのがlittle-c(小文字の創造性)の研究の流れである。ここでの創造性は、程度差はあっても、潜在的に誰もが有していると想定されている。

しかしちょっと考えて見ればわかるように、これでは、卓越した創造性以外はすべてlittle-cになってしまう。そこでBig-Cとlittle-cの中間にプロフェッショナルの創造性Pro-Cを置き、またlittle-cの下部に、より個人内的な創造性としてのmini-cを置き、計4水準に分ける案が提案されるようになった[1]。生産的な議論のためにはどの水準の創造性を扱っているかの自覚が重要だろう。

ちなみに、創造性の実証研究としてみると、Big-Cは、Bigであるほど社会的インパクトが大きいわけで、その評価が確定するまで長年月かかる。そのため、短期的な実証研究の遡上には乗りにくい。したがって、実証研究の上では、大半はPro-Cの上澄みである。Big-Cを直接扱っている孤高の例は、評価の定まった創造性の歴史的データを中心に分析している歴史計量的アプローチのサイモントンである[2]。

[文献]

  • Kozbelt,A., Beghetto,R,A. & Runco,M.A.(2010). Theories of Creativity. In Kaufman,J.C., & Sternberg,R.J.(Eds.). The Cambridge Handbook of Creativity. ch.2(pp.20-47). Cambridge U.P.
  • Simonton,D.(1988). Scientific Genius:A psychology of science. Cambridge U.P.

(奥正廣)