問題解決(problem solving)
問題とは、主体が、事態の現状(現実状態)と目標状態(理想状態)との間にギャップがあり、そのギャップは努力なし(自然的・自動的には)には解消しにくく、その状況は困ったことでありできればそのギャップを低減・解消したい、と感じている事態のことである。問題解決とは、その問題の現状と目標のギャップを解消する方法を見出すこと(認知)、またはそれを実際に達成すること(行動)、である。
問題解決行動をコンピュータ・プログラムとして実現するために一般問題解決者(GPS:General Problem Solver)という考え方が提案された。現状(初期状態)地点と目標地点を含む問題空間の中で、手段-目標分析によって、利用可能な手段(演算)を使って少しずつ目標地点に近づいていくのが問題解決だと考えるのである。この解決を容易にするのは目標をいくつかの下位目標に分割し、現状に近い下位目標から目標に近い下位目標への段階的な到達を考えていくことである。これはわたしたちの日常の問題解決でも類似しているだろう。もし問題(空間)がこのように表現できるならコンピュータ・プログラム(アルゴリズム)でも解くことができることになる。
このようにコンピュータ・プログラムでも解けるような問題は、現状、目標、利用可能な操作(手段)、その他の制約(利用可能な道具・資源、活動ルール等)など問題解決に必要な条件がすべて明確に与えられた問題で“良定義問題(well-defined problem)”といわれる。それに対して一部の条件が不明確・不十分である問題は“悪定義問題(ill-defined problem)”といわれ、このままではコンピュータには解けないし、人間にとっても相対的に難しい問題になる。なぜなら、悪定義問題は解くために良定義問題に変換する必要があるからである。
現実の社会問題はほとんど悪定義問題で、創造的問題解決者がそのような問題を解く能力があるのは、悪定義問題を良定義問題に変換する能力があるからだともいえる。これは問題表現あるいは問題定式化の問題と解釈できるから、問題解決者の感受や認知の仕方、動機づけ等に関係することがわかる。しかしこれは、メカニズム的にどう説明されるのだろうか? 研究されてきた1つの可能性は類推(アナロジー)である。一般的に、創造的問題解決は、既知の問題解決(のレパートリー)を新規の問題解決に応用するといえるだろう。前者を類推の“ベース”とみなし、後者を“ターゲット”と考え、どういう条件やメカニズムで効果的な類推が可能になるかを探求するのが類推(アナロジー)研究である。古典的創造性研究の流れでいえば、遠隔連想(remote association)に関係するだろう。
[文献]
- カーニー(1989)「問題解決」海文堂
- ホリオーク,K.J. & サガード,P.(1998)「アナロジーの力」新曜社(Holyoak,K.J. & Thagard,P. (1996). Mental Leaps. MIT Press.)
(奥正廣)