目的工学(Purpose Engineering)

目的工学(Purpose Engineering)

社会的意義のある価値を創造するため、関係する個々の主体が高次の目的のもとに臨時的共同体を形成して必要な資源を持ち寄り、目的群と手段・技術の体系を動態的に調整しつつ、オープン・イノベーションやプロジェクト・マネジメントを駆動していくための実践的知識綜合の方法論。アリストテレスの目的論、実践的三段論法やアブダクションなどを基礎に置く。科学技術の目的創出などにも関わるものとして重要である。

目的工学では、目的を大目的、中目的(駆動目標)、小目的の三階層に分類して捉えます。

大目的:最上位に位置づけられた共通善につながる本質的な目的。あるべき姿、理想の追求を含む。

中目的(駆動目標):大目的を実現するためのプロジェクトを駆動させる具体的な目的。挑戦的な目標値を含む。

小目的:プロジェクトへの参加当事者が抱く個別の目的。自己実現、幸せの追求が反映される。

事例としてアポロ計画を取り上げれば、次のようになる。

大目的:米国にもたらされる安全保障の優位性、科学技術の発展、産業の振興。
中目的(駆動目標):1960年代のうちに、人を月に降り立たせ、地上に生還させる。
小目的:世界初のプロジェクトの実現、ロケットの開発、ソフトウェアの開発。

以上、目的工学は紺野登らによって提唱された。

(田村新吾)