創造性テスト(Torrance Test of Creative Thinking:TTCT)で測る創造性 弓野憲一

創造性テスト(Torrance Test of Creative Thinking:TTCT)で測る創造性

現在、創造性を測るテストとして、Torrance Test of Creative Thinking(TTCT)が盛んに用いられている。テストを受ける人に、”ある絵について不確かな点を質問する”、”絵のような事態になった原因を推測する”、”ぬいぐるみをおもしろいおもちゃに改良する”、”アキカンの利用法”、”εを一部に組み込んで意味のある絵を描く”等々の問題が与えられ、たくさんのアイデアをだすことが求められる。そして、アイデアの多さ(思考の流暢性)、アイデアの多様さ(思考の柔軟性)、めずらしいアイデアが含まれているか(思考の独自性)に対して、得点が与えられ、その人の創造性得点とされる。

この創造性得点の高い人ほど、詩、小説、科学、数学、技術、デザイン、美術等において、間違いなく素晴らしい作品や質の高い発見・発明をするであろうか。これは創造性テストの予測的妥当性に関する問いである。

トーランスやその共同研究者たちは、小学校時代の創造性得点と、20年後の創造的産物等の評価得点の間にかなりの相関があることを理由に、創造性テストは、その人が可能性としてもつ創造性を測定していると主張する[1]。

しかし、小学生時代の被験者は創造性等を考慮して選ばれたギフティド・チャイルドであり、おそらく恵まれた環境の中で順調に才能を伸ばして、20年間の間に、社会で通ずる創造性を発揮したと推測することもできる。また、TTCT得点と現実の作品や発見・発明の間には低い相関しか得られないとする研究結果もたくさんある。

創造性テストは、ある種の創造性を測定していることは確かかもしれないが、その得点の高低のみで、現実世界における創造的産物や創造的行動をすべて予測することは困難である。新たな、何か価値あるものの創造には、「何が解決すべき問題であるか」という「問題に対する感受性」がもっとも重要である。

創造性テスト得点は、与えられた問題に対して解決に役立ちそうなアイデアをたくさん出すことの能力を主として測定している。新たな価値ある問題を解決するためには、「視覚化とイメージ能力」「比喩的な思考能力」「評価能力」「変換能力」「問題の定義能力」等々の様々な能力も欠かせない。

[文献]

  • Torrance,E.P.(2002). The Manifest – A Guide to developing a creative career. Library of Congress Cataloging-in-Publication Data, USA.

(弓野憲一)